
梅雨だから雨が降る?
「Q. 最近雨がよく降るね?」
「A. 梅雨に入ったからね~」
先日、電車に乗っていると、そんなやりとりがとなりの席から聞こえてきました。雨のお話はそこで終わり、別の話題へと移っていきましたが、ここで私の中に小さな疑問が生まれました。
「Q. 梅雨だから雨が降るって、それ説明になっているのかな?」
梅雨に入ったから→最近雨がよく降る。
これは梅雨(原因)→雨(結果)といった現象が、必然的・規則的に起きることを前提とした法則である(因果律といいます)という説明です。しかし、もう少し問いを重ねていくと、雨が降るという現象の奥に、深く多岐にわたる因果律があることがわかります。
「Q. そもそも、なぜ、梅雨に入ったら雨がよく降るのだろう?」
「Q. そもそも、なぜ、この時期にそういう現象が発生するのだろう?」
「Q. そもそも、なぜ、そういう現象が発生するように、地球はできているのだろう?」
このような問いは、現代の気象学そして地球惑星科学の発展へとつながっています。しかし、いま私たちがメディアなどで普段触れる天気予報では、梅雨(原因)→雨(結果)で一旦説明は区切られてしまい、その先の因果律まで話が広がることは稀です。シンプルに「こう」だから「こう」と説明されることが好まれているからです。
1つの現象を1つの因果律で説明できるほど世界は簡単にできてはいない
株式市場における因果律の例も見ていきましょう。
2010年5月6日に、ニューヨーク市場のダウ平均株価が短時間の間に乱高下しました。このような瞬間的な急落は、いまではフラッシュ・クラッシュと名付けられています。当時、ある特定の株の取引がこの現象の引き金であったという原因特定がされました。
この現象も、ある1つの因果律として片づけられたかのようにも思えましたが、そもそもこの取引がフラッシュ・クラッシュにまでなぜ達したのかという問いにはいまだ答えられていません。さらに、同じ事象がその後も欧州株式市場でも発生し、その直接的原因が一体なんなのか全く説明できていません。
シンプルイズベストという言葉があります。
しかし、残念ながら1つの現象を1つの因果律で説明できるほど、世界は私たちにとって簡単にはできていません。
この事実を日々念頭に置きながら、「Q. 自分はいま、数多ある因果律の中で、どこを切り取って、シンプルに説明しようとしているのだろうか?」と自問してみていただくと、より視野が広がるのではないかと考えています。
この世界には、自分で深く考えることでしか気づけないことがあります。 なにより、自分で深く考えた体験は、自分を裏切らないと考えています。
wovは、これからも考えるあなたの追い風となりたく、「立ち止まって深く考えるための機会」を提供して参ります。
Profile

Founder&CEO
Daishi Matsukura
知的好奇心をエネルギー源に、日々答えのない問いに胸が熱くなりながら挑み、未知を開拓しています。人々の営みや世界そのものを受け止め、輝くバトンを後世へ引き継いでいきます。